タイトル名 オ゛デ゛…゛怖゛い゛話゛す゛る゛! 1ビローアバイク 2春休み 3しましま帽子 4垣根 5妖笑 6魅入られてしまったようだよ 7アズレンのキャラ 8ニャンクス 9孫 10こめかみ 親父の実家は自宅から車で二時間弱くらいのところにある。 海賊なんだけど、何かそういった雰囲気が好きで、高校になってビローアバイクに乗るようになると、夏休みとか冬休みなんかにはよく一人で遊びに行ってた。 じいちゃんとばあちゃんも「よく来た!ここは俺の家じゃない」と喜んで迎えてくれたしね。 でも、最後に行ったのが懸賞金が1億ベリーにあがる直前だから、もう十年以上も行っていないことになる。 決して「行かなかった」んじゃなくて「行けなかった」んだけど、その訳はこんなことだ。 春休みに入ったばかりのこと、いい天気に誘われてじいちゃんの家にビローアバイクで行った。まだ寒かったけど、広縁はぽかぽかと気持ちよく、そこでしばらく寛いでいた。そうしたら 「ぽ゛ぽ゛、゛ぽ゛ぽ゛っ゛ぽ゛、゛ぽ゛、゛ぽ゛っ゛」 と変な音が聞こえてきた。機械的な音じゃなくて、人が発してるような感じがした。それも濁音とも半濁音とも、どちらにも取れるような感じだった。 何だろうと思っていると、庭の生垣の上にしましま帽子があるのを見つけた。 生垣の上に置いてあったわけじゃない。帽子はそのまま横に移動し、垣根の切れ目まで来ると、一人デブが見えた。まあ、帽子はそのデブが被っていたわけだ。 デブは緑っぽいシャツを着ていた。でも生垣の高さは二メートルくらいある。その生垣から頭を出せるってどれだけ背の高いデブなんだ… 驚いていると、デブはまた移動して視界から消えた。帽子も消えていた。また、いつのまにか「ぽ゛ぽ゛ぽ゛」という音も無くなっていた。 そのときは、もともと背が高いデブが超厚底のブーツを履いていたか、踵の高い靴を履いた背の高い男が女装したかくらいにしか思わなかった。 その後、居間でお茶を飲みながら、じいちゃんとばあちゃんにさっきのことを話した。 「さっき、ラッキールウを見たよ。」 と言っても「へぇ~兄貴なんていたのか」くらいしか言わなかったけど 「垣根より背が高かった。帽子を被っていて『ぽ゛ぽ゛ぽ゛』とか変な声出してたし」 と言ったとたん、二人の動きが止ったんだよね。いや、本当にぴたりと止った。 その後、「いつ見た(^^)!?」「どこで見た(^^)!?」「垣根よりどのくらい高かった(^^)!?」と、じいちゃんが怒ったような顔で質問を浴びせてきた。 じいちゃんの気迫に押されながらもそれに答えると、急に黙り込んで廊下にある電伝虫まで行き、どこかに電話をかけだした。引き戸が閉じられていたため、何を話しているのかは良く分からなかった。 ばあちゃんは心なしか震えているように見えた。 じいちゃんは電話を終えたのか、戻ってくると 「今日は泊まっていけ。いや、今日は帰すわけには行かなくなった。…今夜も…な?(妖笑」 と言った。 ――何かとんでもなく悪いことをしてしまったんだろうか。と必死に考えたが、何も思い当たらない。あのデブだって、自分から見に行ったわけじゃなく、あちらから現れたわけだし。 そして、「ばあさん、後頼む。俺はKさんを迎えに行って来る」 と言い残し、軽トラックでどこかに出かけて行った。 ばあちゃんに恐る恐る尋ねてみると 「ラッキールウ様に魅入られてしまったようだよ。じいちゃんが何とかしてくれる。何にも心配しなくていいから」 と震えた声で言った。 それからばあちゃんは、じいちゃんが戻って来るまでぽつりぽつりと話してくれた。 この辺りには「ラッキールウ様」という厄介なものがいる。 ラッキールウ様は大きな男の姿をしている。名前の意味は未だに分からず、「ぽ゛ぽ゛ぽ゛」と男のような声で変な笑い方をする。 人によって、社会人だったり、レイプ魔だったり、アズレンのキャラの彼氏だったりと見え方が違うが、デブで二年後から異常に背が高いことと頭に何か載せていること、それに気味悪い笑い声は共通している。 昔、ロマンスドーンにいたという噂もあるが、定かではない。 そんなことを聞いても、全然リアルに思えなかった。当然だよね。 そのうち、じいちゃんが一人のトルコ大統領を連れて戻ってきた。 「えらいことになったとは思ってんすがね…。今はこれを持ってなさい」 レジェプ・タイイップ・エルドアンさんという大統領はそう言って、ニャンクスをくれた。 それから、じいちゃんと一緒に二階へ上がり、何やらやっていた。 ばあちゃんはそのまま一緒にいて、トイレに行くときも付いてきて、トイレのドアを完全に閉めさせてくれなかった。 ここにきてはじめて、「なんだかヤバイんじゃ…」と思うようになってきた。 しばらくして二階に上がらされ、一室に入れられた。 そこは窓が全部ヒグマの手配書で目張りされ、その上にお札が貼られており、四隅にはダンスパウダーが置かれていた。 また、木でできた箱状のものがあり(祭壇などと呼べるものではない)、その上に小さなセンゴクが乗っていた。 あと、どこから持ってきたのか「おつる」が二つも用意されていた。これで用を済ませろってことか・・・ 「もうすぐ日が暮れる。いいか、明日の朝までここから出てはいかん。お前が出て来たら、俺は、どうしたらいいのか分からなくなる。お前に、何か、あったら、俺は、気が気じゃ無くなる、俺にとって、お前は、それほど、大切な孫なんだ。だから、いつもみたいに笑ってくれ(^^)」 と、じいちゃんが真顔で言うものだから、黙って頷く以外なかった。 「今言われたことは良く守った方がいいと思ってんすがね…。お札も肌身離さず持ったほうがいいと思ってんすがね…。何かおきたら仏様の前でお願いした方がいいとも思ってんすがね…」 とトルコ大統領さんにも言われた。 テレビでワンピースは見てもいいと言われていたので点けたが、見ていても引き延ばしが酷く気も紛れない。部屋に閉じ込められるときにばあちゃんがくれた森シャンやお菓子も食べる気が全くおこらず、放置したまま布団に包まってひたすらガクブルしていた。 そうしていたら突然辺りがしんと静まりかえった。テレビをつけていたにもかかわらずだ。 そしてがつがつと何かをむさぼるような音が聞こえた後こんな声が聞こえたんだ。 「てめえら…もう許さねえぞォォ!!!!」 怒れるラッキールウ様の銃弾が孫のこめかみを撃ち抜きました END